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八千代メンタルクリニック
「パニック障害」について
帝京大学医学部附属市原病院 精神神経科 教授 竹内龍雄先生のご厚意により、掲載させていただきました。同院で、パニック障害の患者さんに配布されている小冊子です。

著作権は竹内教授に属しますので、無断転載は決してしないで下さい。

パンフレットを元に、長谷川が入力したもので、細心の注意を払ってはいますが、何かご不審の点がありましたらご一報ください。
「パニック障害」について
 「パニック障害」とは、パニック発作(不安発作とも言う)を繰り返すことを特徴とする病気です。従来、不安神経症の一部と考えられていたものが、1980年、米国精神医学会で独立した病気として扱われるようになり、世界的に注目されるようになりました。この障害はかなり多いもので、米国の統計によると、人工の1.5%に見られ、20〜40歳代に多く、女性に多いと言われています。
 この小冊子は、「パニック障害」とその治療について、最新の知見をふまえ、患者さんやその家族の方のために、やさしく解説したものです。この病気についての正しい知識と理解を持つことは、きっとあなたの治療に役立つはずです。よく読んで、もしわからないところがあれば、遠慮なく主治医にお尋ね下さい。
<パニック障害の症状>
 パニック障害の症状は、パニック発作と発作以外の症状にわけられます。パニック発作はこの病気に必ず見られる症状です。発作以外の症状は、ない場合もあります。
1) パニック発作
 パニック発作というのは、突然、理由もなく、強い不安や恐怖に襲われ、それと同時に、動悸(心臓がドキドキする)、頻脈(脈が速くなる)、胸苦しさ、息苦しさ、めまい、体のふるえ、手足のシビレ、などの症状にみまわれるものです。そのときは恐怖のあまり、それこそパニック状態におちいり、今にも死んでしまうのではないか、気が変になってしまうのではないか、などと思うほどです。居てもたってもいられず、誰かに救いを求めたり、救急車で病院を訪れたりしますが、しばらく(数分から、長くても1時間位)すると症状は自然におさまります。しかし、何日かしてまた繰り返す傾向があります。
 この発作で命を落とすことは決してありませんし、また発作がこうじて精神病になったりすることもありません。検査などで原因となるような身体的な異常は見られず、真の原因は不明ですが、脳のある部位の神経活動の一時的な興奮によるものと考えられています。また、薬物が非常に有効で、薬によってパニック発作をとめることができます。
2) パニック発作以外の症状
      予期不安、広場恐怖、心気症、うつ状態など
 パニック障害は発作のない時は何ともないこともありますが、発作を繰り返すうちに、「また発作が起きるのではないか」「外出先で発作が起きたらどうしよう」などと、発作の再発を恐れるようになることが多いものです。これを「予期不安」(発作を予期することによって生ずる不安)と言います。そしてこの予期不安の結果、一人で外出したり、乗り物に乗ることが不安で、恐れ避けるようになることがあります。これを広場恐怖(または外出恐怖)と言います。外出恐怖のために、買い物、旅行、出張などが困難になり、社会生活に支障が出ることも少なくありません。
 またパニック発作は、動悸、胸苦しさ、息苦しさなど、一見心臓発作のような症状を示すため、医者から「心配ない」と言われているのに、心臓に対する不安が常に頭を離れず、必要以上に心臓への負担を気にする場合があります。心臓神経症とか心気症と言われる状態です。また人によっては、このような不安に負けてびくびくしている自分が情けないと感じ、気分が落ち込んで、ゆううつ、おっくう、眠れない、などのうつ状態に陥ることもあります。また、不安や気分の重苦しさを忘れようとして、アルコールの量が増える人もいます。
 しかし、これらの症状の多くはパニック発作から二次的に生じてきたものです。したがって、薬物治療によってパニック発作がなくなれば、これらの症状も自然に軽快していくことが期待されます。
 また、このようなパニック障害の症状の多くは自覚的な(自分が感じるだけのもの)もので、外見からは何の異常も見られません。そのため他人にわかりにくく、なかなか理解してもらえません。話しても「気のせい」「気にしすぎ」くらいに受け取られる場合が多く、一人でひそかに悩んでいる患者さんが少なくないのが実状です。本障害に対する一般の人々の理解がひろまり、正しい診断と適切な治療が普及することが望まれます。
<パニック障害の治療>
パニック障害の治療はふつう次のような方法で行われます。
1) パニック発作を起こらなくする薬物がわかっているので、それを服用します。この薬は「抗うつ薬」と言って、もともとはうつ病の治療薬ですが、パニック発作にも有効で、それを少量から初めて、発作がなくなるまで少しずつふやしていきます。効果が現れるまで1〜2週から数週間かかることが多いので、根気よく服用することが必要です。副作用として、眠気、だるさ、口の乾き、便秘などが出現することがありますが、ある程度やむを得ないもので、薬が効いている証拠と考え、ひどくなければそのまま続けていて下さい。そのうちに軽くなる場合が多いものです。この抗うつ薬療法がパニック障害の治療の基本になります。
2) ふつうは同時に「抗不安薬」と呼ばれる軽い精神安定剤を併用します。これは文字通り不安を鎮める作用のある薬で、発作にも有効ですが、発作から二次的に派生したさまざまな不安に有効です。速効性があるのでのんですぐに効き、抗うつ薬の効果をおぎないます。副作用は眠気、ふらつき、くらいでまず心配ありませんが、医師の指示どおり服用し、急にやめぬようにしなければなりません。パニック障害の症状や、抗うつ薬の副作用の程度によっては、この抗不安薬のみで治療することもあります。
3) パニック発作が起こらなくなり、不安がなくなってきたら、これまで不安のために制限されてきた活動に徐々に挑戦し、行動範囲をひろげて行くようにして下さい。ここからは本人の努力も必要です。外出が不安で避けてきた場合は、家の近くからしだいに距離と時間をのばしていくような、段階的な訓練をしていきます。無理をせず、一歩一歩前進し、自信をつけていく要領です。家族や友人の協力があればたいへん幸いです。
 治療中の心得として、以下のようなことがあげられます。
1) 薬をのんでいる間も、仕事や日常生活はふつうにしていてかまいません。ただし車の運転など危険を伴う機械の操作には従事しないで下さい。また、アルコールはひかえめにし、薬と一緒にはのまないようにして下さい。他の科や病院からも薬をもらっている場合は、一緒にのんでよいかどうか医師にご相談下さい。
2) 「副作用が怖いから薬はなるべくのまない方がいい」「薬に頼らず気の持ちようでなおすべきだ」などの話をよく聞きますが、パニック障害の治療に関しては、得策ではありません、十分な薬物治療を行って、パニック発作がなくなってから、本人の努力に期待する段階に移ります。
3) 治療中であっても軽い発作にみまわれることがあります。そのような場合はあわてず、医師の言った言葉を思い出し、「不安が起きたらそのつどやり過ごす」ようにしてみて下さい。「そのうち不安が通り過ぎていってしまう」はずです。頓服薬をのむよう指示されている場合は使ってかまいません。
 以上のような治療によってパニック障害はよくなります。ただ、人の心理の常として、パニック発作がなくなっても、恐怖の記憶はなかなか消えないかもしれません、しかし時間とともに確実に薄らいでいきます。根気のよい訓練とともに、前向きな、楽観的な考え方をするようにつとめ、可能な範囲で生活をエンジョイするようにしましょう。運動、入浴、社交、などはストレス解消に有効です。これらを楽しめるようになったとき、パニック障害は既に克服されたと言えます。
帝京大学市原病院精神神経科 心身症外来
竹内龍雄

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